たくましさを育てる
元岡幼稚園 園長 井上 健一
9時からの園庭遊びで良く見受けられる風景が、三輪車にかかわることです。
「僕がとったの」「いや僕が早かった」と言い合ったり、古い三輪車があっても、新しいのがよいと、取り合ったりしています。
このようなことが生じた場合、先生方は、押し倒されて怪我しそうではないかぎり、すぐには駆けつけず、じっと見ています。
何故かというと、自分で、自分たちで解決できるかなと見守っているのです。子どもだけで解決できるようになってほしいからです。
取り合いができるのは成長している証拠なのです。
世の中には、色々な人がいます。考えが違えば対立が生まれることもあります。大人が先回りして「貸してあげましょうね」とトラブルを避けることが、真に子どものためになるのでしょうか。
優しい子は、「いいよ」と上手に譲ることができます。
自己主張が強い子は「イヤ」とはっきり言えます。
どちらがいいではなく、どちらも個性の発揮なのです。
優しい子には、譲ったことを誉めましょう。
もしかしたら譲った子でも、心の中では、モヤモヤとした思いが残っているかもしれません。だからこそ、あなたは、あなたの良さである優しさを生かして譲ってやって素晴らしいと、しっかり褒め称えましょう。
トラブルが多い子は、成長の機会が沢山ある子だと思い、その場では、「がまんしなさい」などと叱りつけることは避けましょう。
保護者の皆様も自分たちが子どもの頃、主張をしっかりとしていた人の事を思い出してみては如何でしょうか。おそらく、そのような方々は、リーダー性を発揮して頑張ってあるのではないでしょうか。
「イヤ 貸せない」と言える子は素晴らしいのです。
自分にとって大切だと思うから「No」と言えるのです。
そのような場面を見たときは、時間を少し置いてから、譲らなかった相手のお友達の気持ちを考えさせることも大切です。
そのときには「ゴメン」と言えなくても、次の機会に譲ることができるかもしれません。そのときこそ、「やさしい心」の発露を認め、しっかりと誉めましょう。